12.退職後から傷病手当金をもらい始める。
退職前から傷病手当金をもらい始め、その後退職という方は多いと思います。
私の場合は職場から休業手当を通常のお給料よりも減額で出ていて、そちらが傷病手当金より額が大きく、1年ほどありがたく休業しながら頂いていました。
労災として認定を目指すのであれば、まずは労働基準監督署に相談が必要ですが、なかなか受給条件は厳しいです(時間外労働時間や証拠集めがかなり必要で、認定期間もかかります)。
私は、労災を受給するだけの体力も、職場と争う事も余計な負担になりそうだったので、特にアクションを起こさずで傷病手当金のみ申請しています。
退職とともに傷病手当金受給開始を考えている方に私の経験が参考になれば嬉しいです。
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本日のテーマ
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【傷病手当金とは】
病気休業中に会社が加入している健康保険の被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
なお、任意継続被保険者の方は、退職後に発症したものの傷病手当金は支給されません。そして、国民健康保険に加入している方も受給できません。
受給期間は最初の支給開始から合計で1年6か月です。
支給期間は、令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して1年6ヵ月に変わりました。ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合は、今までどおり支給を開始した日から最長1年6ヵ月までの期間になります。
なので、途中で職場復帰した場合も、その間の出勤日数は1年6か月には含まれず、後に残りの期間を受給できるようになりました。
以前は職場復帰している間も1年6ヶ月の期間にカウントされていたので、この改正はありがたいですね。
【傷病手当金をもらえる条件】
退職までに健康保険に継続して1年以上加入している方で、被保険者が病気やけがのために働く事ができず、職場を休んだ日が連続して3日間あった上で、4日目以降、休んだ日に対して支給されます。
一部例で示します。
私の加入していた健康保険協会では、退職前1か月の期間を書類に記載するように指示されました。在職中であれば3日以上待機期間で休職があれば可能なようですが、詳細については一度確認することをおすすめします。いずれにしても、退職日に出勤してしまうとNGになることもあるのでご注意ください。
また、下記の場合は支給額の調整もしくは受給できません。
傷病手当金を受け取った後に、下記に該当している事が判明した場合は、傷病手当金の返還や今後の受給困難に繋がりますのでご注意を!
◆給与の支払いがあった場合◆
休んだ期間について、給与の支払いがある場合、傷病手当金は支給されません。
ただし、休んだ期間についての給与の支払いがあってもその給与の日額が、傷病手当金の日額より少ない場合、傷病手当金と給与の差額が支給されます。
◆障害厚生年金・障害手当金を受けている場合◆
同一の傷病等による障害厚生年金または障害手当金を受けている場合、傷病手当金は支給されません。ただし、障害厚生年金額の1/360が傷病手当金の日額より少ない場合、差額が支給されます。また、障害手当金の場合は、傷病手当金の額の合計額が障害手当金の額に達することとなる日までの間、傷病手当金は支給されません。
◆年金を受けている場合◆
資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が、老齢退職年金を受けている場合、傷病手当金は支給されません。ただし、年金額の1/360が傷病手当金の日額より少ない場合は、差額が支給されます。
◆労災保険から休業補償給付を受けていた(受けている)場合◆
過去に労災保険から休業補償給付を受け、同一の病気やけがのために労務不能となった場合、傷病手当金は支給されません。また、業務外の理由による病気やけがのために労務不能となった場合でも、別の原因で労災保険から休業補償給付を受けている期間中は、傷病手当金は支給されません。ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます。
◆健康保険給付の対象にならない自費受診◆
美容整形など健康保険の給付対象にならない治療の為の療養も対象外となります。
◆出産手当金を同時に受けられるとき◆
傷病手当金の額が出産手当金の額よりも多ければ、その差額を支給することとなります。
また、失業保険給付と傷病手当金は同時受給はできません。
自分の加入している健康保険組合がどこなのかによっても手続や条件が異なってきます。ぜひ、健康保険証に記載されている健康保険協会の連絡先で確認するようにしてください。
↓↓加入が協会けんぽであれば下記のサイトをご参照ください(書類等もみられます)
傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)
傷病手当金と似た名称の制度に「雇用保険の傷病手当」もありますが、こちらは受給資格者が失業後、ハローワークに来所して求職の申し込みを行った後に、15日以上引き続いて病気やケガのために仕事につく事ができない場合に支給される制度となります。
詳細についてはハローワークで確認してください。
私の場合、退職相談時に退職後から受給したい旨を伝え、書類を依頼しましたが、退職前から受給していないなら退職後も受給できないと言われました。けれど、あらかじめ加入している健康保険協会(協会けんぽでない所)に確認をとっていた私は、「受給できます!連絡して聞きました。」と自信を持って答える事ができました。
職場の人事や事務員は専門家では無いので、情報があいまいです。手続きや受給条件は直接健康保険協会に電話して確認する方が安心です。
【傷病手当金受給内容】
傷病手当金の支給金額は、健康保険などの社会保険料を算出する際に使用される「標準報酬月額」を元に2/3が支給されます。
「標準報酬月額」が給与明細に記載されている場合もあります。また、支払っている健康保険料でも等級がわかりますので、それを元に確認してみるのも良いかと思います。基本的に毎年4月~6月に支給された報酬の平均額で決定されます(この間に残業代が増えると額も増加します)。
傷病手当金の1日当たりの支給額=(支給開始日前の12か月の標準報酬月額の平均)÷30日×2/3
例)
在職1年以上、他に労災等の受給無し。
過去12か月の標準報酬月額の平均は24万円の場合は5333円/日
31日休職した場合は16万5323円が支給されます。
概ね給与の2/3と思ってもらうと想像しやすいかもしれません。
【退職前の傷病手当金の手続き(退職後に初回申請する場合)】
1.在職中から申請の意思を伝え、書類等を職場に依頼します。
2.書類を自宅に送付してもらう、もしくは健康保険協会のホームページからダウンロード
3.健康保険証を返還する前に両面コピーもしくは写真を撮っておく(保険証番号が必要になります)
【退職後の傷病手当金の手続き(退職後に初回申請する場合)】
私の場合は月末退職で、退職前の休職期間1か月+退職後1か月をまとめて第1回目として申請しました。期間や記載方法は健康保険協会によっても異なりますので一度確認を。 退職前3日+退職後1ヶ月で申請可能な場合もあります。
在職中の期間分については退職後に提出で問題ありません。ただし、退職してから長期間経過すると、医師による「労務不能の証明」がもらえない場合もありますので、早めに申請する事をおすすめします。
4.退職後の受診時に主治医に記載を依頼
診療報酬点数は100点で、つまり1000円です。通常はこのうちの1~3割の保険料負担分が傷病手当金意見書交付料として本人に請求されます。診断書料金はかかりませんので、毎月この金額で書いてもらえるのはありがたいです。
私の場合は、退職後1か月分とまとめて申請だった為、1か月経過後の月初の受診で依頼しました。未来の記入はしてくれないので、かならず期間経過後にその間の症状や受診回数などを記載してもらうようにして下さい。
また、医院によっては当日作成できない事もありますので、早めに依頼する事をおすすめします。
5.自分の記入部分を埋めて、職場に送付
6.職場から「出勤簿」「賃金台帳」等の書類を添えて、保険協会に申請
7.規定日に支給
私の場合は月末支給のための申請日期限が設けられていました。まとめて申請する方もいますが、基本は1か月毎の書類作成と翌月請求です。
ただ、私の場合、職場との今までのやりとりで書類の不備が多々あり、情報も曖昧であった事に不安と不信感もあったため、自分で直接健康保険協会に申請したいと退職前に伝えていました。
その後の失業給付の受給延長の申請にも、傷病手当金の書類でスムーズな申請可能でしたので、自分で発送する旨を伝えて、コピーを取っておく方が良いかもしれません。
その場合1.~4.は一緒ですが、
5.自分の部分は未記入で職場に記入依頼
(レターパックプラス同封で期日を設け、追跡で返送確認できるようにしました)
6.職場から届いた「申請書」「賃金台帳」「出勤簿」と一緒に、未記入部分を埋めて、健康保険協会の窓口へと送付
7.月末に前月分が口座入金
となりました。
ただし、協会けんぽで以前請求した人は、最初に職場に記載をしてもらい、その後医師と自分の記入をしてから送付していました。
私の場合もそれをできないか尋ねましたが(病名等をあまり職場にみせたくなかったので)、医師の記入を元に職場が証明するのでNOと言われました。診断書をずっと出してたんだからわかるじゃん!!という気持ちでしたが残念。
何れも、頻回な相談に親切に応じて下さった健康保険協会の方には感謝です。
この間も職場の事務員は嫌々な対応で、虚偽情報を堂々と伝えてきて否定すると嫌味を言われるという事が多々あり。もう二度と関わりたくない職場だったという強い印象だけを残してくれました。
職場側も書類の準備や記入に時間を割かれるという事もありますので、すったもんだはある程度仕方ないと覚悟しておく方が、こちらも気持ちが楽かもしれません。
退職とともに傷病手当金受給を考えたいという方は参考にして頂ければと思います。
もし、はじめに記載したように、労災として申請等を考えている方は、自分が請求要件をみたせるかなど労働基準監督署に退職前に相談に行く事をおすすめします。
苦労の末に受給できた方もいますし、以前に比べると条件や対象者も緩和や整備されてきている印象ですが、労力と時間、準備が多いに必要になる事は心にとどめておいて頂ければと思います。
労働基準監督署とのやりとりなど、また機会があればいろいろ経験をお伝えできればと思います。